引っ込み思案な恋心。-1st
「先輩も好きな人がいるんだって。しかも同じ3年生の人」
「うそ……」
あの短い間にそんなことがあったなんて。
でも、戻ってきた時のあゆは、振られたとは思えないくらい普通のいつもの明るいあゆだった。
「…こんなこと言われても、信じられないよね?自分でも信じられないもん。だけど、先輩引退しちゃって、もう体育祭ぐらいでしか自由に話せないと思うと、『告らなきゃ』って思っちゃって…」
「あゆ……」
あゆの表情はまだ切ない余韻が残っていたけど、吹っ切れたようにも見えた。
「…辛かったでしょ?私は失恋とかしたことないから頼りにならないかもしれないけど、側にいることならできるから」
「ありがと、柚」
あゆは私の手を握り締めてくれた。
あゆと見つめ合ったところで、バザーに行っていたななっぺとあかねちゃんが帰ってきた。
「あっれ〜?二人ともどーしたの?妙にセンチメンタルじゃない?」
静かだった空気に、あかねちゃんの明るい声が響く。
「どした?何かあったの?柚がいじめられてたとか?」
お茶のペットボトルを机に置いたななっぺは、心配そうに私の顔をのぞき込んできた。
すると、あゆが必死に首を横に振った。
「違う違う!柚は私のことを励ましてくれたの!……そうだ、柚に話したなら、二人にも話さないとね」
あゆが私の顔を見てきた。
私もあゆを見つめて、ゆっくりと深く頷いた。