W☆

ユージさんをタクシーに押し込んで、運転手にいつもの行き先を告げた私は、その姿が見えなくなるまで手を振った後、すぐに店内へと引き返した。


「やっと帰ったぁ〜」


店内では、ママがすでに片付けを始めていた。
二人きりのそこは、やけに暗くて静かで、一日の疲れをどっと感じさせる。


「ナナミちゃん、お疲れ様」


ママの優しい声が、疲れた心をわずかばかり癒してくれる。

そう、疲れているのは身体よりも心のほうなんだ。

暇な仕事をこなすことは、忙しい以上に疲弊する。
めんどくさい客が長居するほうが、まだマシなのかもしれない。
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