蒲公英
「特別だぞ?」




深く追求することもなく、マスターはいつもどおりにカクテルをつくってだしてくれた。






哀しい蒼のカクテルだった。






僕はそれを一気に飲み干した。

喉が熱い。






涙がでた。






「マスター。俺…、やばいよ。今さらあいつの顔が浮かんで消えないんだ」






マスターは手をとめた。






「声が聞こえて…。忘れてたはずなのに…。なんで今ごろ…っ。思い知らせてくれなくていいのに。俺がどんなにあいつのことを愛してたかなんて…」






なにも言わないマスター。

僕は嗚咽混じりに言葉を紡いだ。






「俺が今でもどれだけ…」

「忘れられるわけねぇだろ」






そこでマスターは遮るように新たなグラスを置いた。
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