蒲公英
「波止場はお前に染みついてる。お前らが、離れられるわけがないだろう」






それはモスコミュールだった。

弱い酒だけど、蒲公英のような色だと沙羅は好んでいた。






「…本当だよな」






僕は頷いた。

本当に…、僕の心は沙羅がすべてだ。






「でも…、じゃあ俺はどうしたらいいんだよ」

「それを俺に聞くのか?」

「だって…」






マスターの瞳はいつも厳しい。

僕がどうしようもなく追いつめられた今、仲間のところではなくここに来たのはそのせいだ。






…叱ってほしかった。






後戻りなどできないことくらい、知っているから。
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