蒲公英
「ねぇ、湧己さん?」




広い車内がもったいないほど、河南子は僕にすり寄って言った。




「ん?」

「新郎新婦…だって」

「夫婦だからな」

「結婚、できたのね。本当に…。あなたと」




再び瞳を潤ませた河南子。

触れた手が少し震えている。




「河南子」




僕はその手に指を絡めた。

空いた右手を河南子の顎に添え、視線を捕らえる。






「…綺麗だよ」






今ならどんなに照れくさい言葉でも言えるような気がした。






でも…、もう少しだけ待たせてやろう、と僕は思った。






運転手もいなくなった後で。

そう。

例えば今夜、ふたりっきりになれたとしたら。











愛してる…、と伝えてやろう。











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