空き瓶ロマンス



しかも、今になってもっと優しい事を言ってあげればよかったなあなんて、後悔するような気持が湧いてきた。

私は、ずっと泣いていた。

頭がぐらぐらして、顔が熱い。


兄も時々、泣きはらした顔をこちらに向けては、鼻をすすったりしている。

雲一つない高い空は真っ黒で、たくさんの星が光っていた。
 
もう冬だ。
 
寒くて、どこか物哀しい季節になった。
 
いつだったか、劇のセリフか何かに、「冬は全てをゼロにする」というのがあった。

確かその後、「春が来ればまた生命は始まる」とかなんとか、って続いた。
 
草や木や花は、その通りかもしれない。

個体としての死が訪れても、それは種の終わりではないから。
 

人間は、個体としての死が、途轍もなく重い。
 
どうしてこんなにも重いんだろう。
 
今まで、どうでもいいとさえ思っていた人なのに。
 

どうして死んでしまうのだろう。
 

私の、お母さんなのに……。


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