空き瓶ロマンス
さっき触れた母の手の力の無さと冷たさに、私は燃え尽きそうな命の正体を知った気がした。
「………ぐすっ」
私は涙を拭って、ティッシュで鼻をかんだ。
その時さえ、兄は私の手を放そうとしなかったので、片手の所為でとてもかみにくかった。
多分、気が回らなかったのだろう。
兄はどこか、呆けているようでもあった。
母に会うのは二度目だったのだろうけど、
きっと今日は私がいたから、兄は泣くのを我慢していたのだ。
普段、どんなに頼りなくても、兄にも長子としての矜持があるらしかった。
その後もずっと、手を繋ぎっぱなしだった。
こんなふうに兄と手を繋ぐのは何年ぶりだろう、なんて思った。
歩きにくくてしょうがなかったけど、兄の手はあたたかかった。