空き瓶ロマンス
帰りのバスに揺られながら、私は目を閉じて、隣に座るみちるに寄りかかっていた。
「……落ち着いた?」
「うん……」
「何があったの?」
「信じられないことが……」
「どんな?」
訊かれても、私も何と答えたらいいのか分からなくて、結局口を噤んでしまった。
悪い事が、重なり過ぎたんだ。
それが一気にドカンと――とどめを刺されたようになって……。
だけど、信也さんがあの場所にいたのは事実だった。
第一に、あんなに背の高い人はあまりいないし、彼が着ていたコートは、私も何度か見た事があるものだった。
そして、信也さんには兄妹がいない事も聞いている。
(私は、何を見てしまったんだろう……)