空き瓶ロマンス
 


情けない事に、一瞬で足がすくんで、二人を追う事なんて出来やしなかった。


きっと今後、確認の電話もメールも、出来っこないだろう……。
 

私は、恋という戦いの前で、ひたすら臆病になってしまい、今や無様な負傷兵に成り下がっていた。
 

ああ、どうしてこの場に居合わせてしまったんだろう……。
 

――今までの、何もかもが突然に信じられなくなってしまった。
 

私は、嘘を吐かれていたの?
 

――相手は大人、私は子供……。
 

もう信也さんは、私なんてどうでもよくなってしまったのかな……。


私、何かした?
 

――思い当たる節が無いから怖い。何を反省すればいいのか分からない
 

ごっぽりと胸に大穴が開いたように、痛い。


ここの真ん中には、何もない。
 

ただ、涙が止まらない。
 

私はハンカチを顔に押し当てて、人目も憚らず、鼻をずっとすすっていた。
 

やがて、みちるが膝の上に、ぽんと何かを置いた。


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