夢の彼方
童顔で小柄―――という一見かわいらしい容姿とは違い、クールで頭の切れる蘭という役。


まずはその表情に苦労した。


あまり笑顔を見せてはいけない。


だけど、捜査のためなら極上の笑顔を見せることもあるという、彼女の表情。


相手の動きを、一瞬も見逃さず常に周囲に注意を払っている、そんな厳しい彼女の視線。


ただ笑顔を見せないというだけではだめだった。


「優奈、そこはもっと伏せ目がちに。セリフはもっとゆっくり」


ワンカットごとにスティーブンの声が飛ぶ。


「そこ、動きが違うよ。もっとアーティーの近くに―――違う、逆だよ逆」


言われたとおりに動くことしかできない。


でもそれでも思ったようには動けなくて。


「優奈、言われたとおりに動くだけじゃだめだよ」


アーティーがそっとわたしに言った。


「君自身が、蘭にならないと。君は蘭じゃない。だからこそ、彼女のことを客観的に見て、彼女のことをもっとよく知るんだよ。蘭を、好きになるんだよ」


―――蘭を好きに・・・・・


わたしと蘭は違う人間なんだ・・・・・。


言われて、改めて実感する。


だけど、共通点だってもちろんある。


日本人だということ。


だからわたしは蘭になろうとしていたけど―――


でも、わたしは蘭じゃないんだ・・・・・。
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