夢の彼方
わたしの言葉に、小木さんはその目を見開いた。


「主人は、お子さんを守ろうとしてハンドルを切りました。でもそれは、あなたのせいでもお子さんのせいでもありません。主人は―――ただ、小さな命を守ろうとしただけです。だから、あなたはこれからも美鈴ちゃんの命をしっかり守ってください。主人の思いを無駄にしないように―――2人で、強く生きてください」


小木さんの瞳から、あとからあとから大粒の涙が零れ落ちた。


嗚咽が漏れ、零れた涙が美鈴ちゃんの頬を濡らす。


「ママ、いたい?いたい?」


美鈴ちゃんが小さな手を伸ばし、小木さんの頬を撫でた。


小木さんは掠れる声で何度も礼を言いながら、未鈴ちゃんを抱きしめていた・・・・・。


母親が1人で子供を育てることがどんなに大変か。


いや、時には夫がいたって大変だろう。


加えて年をとった親の面倒もみなければならないとなればなおさら、その重圧から逃げたくても逃げられない母親の心労を考えると、あの人を責める気にはなれなかった。


それは、やはり離婚して1人娘を育てている義姉にもきっとわかると思うのだが・・・


今は、弟を亡くしたショックで、考えられないのかもしれない。


そんな風に思うしかなかった。


「お前は、人が好すぎるけどな」


呆れたようにぼそっと呟かれたタケル君の言葉を、わたしは聞こえないふりをして過ごした・・・。

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