夢の彼方
まんまと車に乗ってしまったのは、有名なアメリカの会社の社長だからとか、車がベンツだったからとかじゃなくて。


なんとなく、この人はいい人のような気がして。


ただ・・・・・


ルークの隣に座っていたレジーは相変わらず無表情で―――


それが不機嫌そうにも見えて、ちょっと怖かったけれど・・・・・。


連れていかれたのは、日本でも超有名なコンサート会場だった。


すでに開場されていて、外には中には入れないファンらしき若者たちがたくさんいて。


その横を車で通り過ぎ、わたしたちは地下の駐車場で降ろされた。


「さあ、行きましょう」


ルークがわたしたちに言って先に歩きだした。


会社の人間らしい人たちがルークを迎えに来ていた。


その誰もが、アニメのキャラクターのコスプレをしたわたしたちを物珍しげにじろじろと見ていた。


本当にわたしたちが一緒に行っていいんだろうか?


何となく居心地が悪くてルークの数歩後ろを歩いていたけれど。


「ルークに文句いう人間なんかいないから、大丈夫」


後ろから、静かな声がした。


振り向くと、そこにいたのはレジーで・・・・。


―――日本語、しゃべれるんだ。


そんなことに驚いてじっと見つめていると。


「あまりルークから離れないで。部外者だと思われる」


言われて、慌ててわたしは子供たちを促してルークの後を追った。


ちらりと後ろを見ると、一番最後に悠然と歩いてくるレジーの姿。


冷たい印象だったのだけれど。


さっきの言葉は、どこか温かさを感じるものだった。


不思議と、安心するような・・・・・。
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