過去作品集○中編

お店を出た吉見は、さっそく指輪を着けた。
しかも、何故か左の薬指に……

『誤解されるから止めてよ』

『誤解されるために左にしたの』

って、冗談じゃないよ。
何でペアリングみたいにしてかなきゃいけないんだ?

私が溜息をつくその隣で、吉見は馬鹿みたいに笑顔だった。

『花柄の指輪買ったのが、相当嬉しいんだね』

『違うっつの。 夏乃とお揃いだから嬉しいんだよ』

これって何て返せばいいのかな?

本気にしていいのか、
冗談にとった方がいいのか。

返答に困るよ。

『ってか俺、本気で夏乃が好きなんだけど』

と、私の逃げ場を無くすかのように続けて言う。

『だから今は他の人を好きでもいいよ。 お試しのつもりでいいから』

真剣な表情に流されそうになる。
逆らえなくなる。

『俺と付き合ってよ』

いいんじゃないの?
今のところ、吉見に不満はないもの。

優しいし、かっこいいし。
それに、一緒にいて楽な気持ちになれるもの。

『こ……こちらこそ、お願いします……』

いいよね?
私、幸せになれるよね……?
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