過去作品集○中編

次の日から、新しい席での生活がスタートした。

隣に座ったのは真面目で大人しい男の子。
吉見とは大違い。

それが何だか凄くつまらないんだ。



『それで吉見ってばねぇ』

昼休みに千里と一緒にお弁当を食べると、吉見の話が多かった。

私の代わりに隣になった吉見と千里。
授業中も二人はなにやら楽しそうにしている。

こういうの嫉妬って言うのかな?
何だか苛々して気持ち悪い……

『夏乃』

と、突然後ろから名前を呼ばれた。
懐かしいような、聞き慣れた声。
これは100%吉見だ。
私が間違うわけがない。

『先生がレポート持ってこいって……』

ほら、少し気まずそうな吉見の笑顔がそこに……

『ありがとう。 職員室に持っていけばいい?』

『うん。 俺も呼ばれてるから先に行くわ』

吉見は、そう言うとすぐに背中を向けた。

あれ?
この甘い香りは……

『吉見、待って!』

私が大きな声で呼ぶと、吉見は突然な事に驚き、不思議そうな顔で振り向いた。

『今、バニラの香りじゃなかった……よね?』

あの甘い香りは、いつもと違ってスッと鼻にくる。

『……ミント?』

『夏乃は鼻がいいね。 煙草、アップルミントの香りがするのに変えたんだ』

少し微笑んだような吉見の顔は心なしか寂しそうに見えた。

『何で変えたの?』

『さぁ。 兄ちゃんと一緒じゃ皆からからかわれるからかな』

じゃあ、何で普通の煙草にしないの?

「夏乃が煙草の匂い嫌いだから」
そういう意味だと思っていいの?

『吉見、もしかして』

『ずっと好きでいてって…… 我が儘言ってごめんね』

……え?

『兄ちゃんとヨリ戻せるといいね』

吉見はそう言って優しく笑う。

何それ。
何なのよ!
そんなの「さよなら」みたいで、悲しくなるよ……
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