桜に雪
疑心
『海斗ー、もう行くわよー。』
朝から慌ただしく、四歳の息子を幼稚園に送っていく。
それが済むと、ゆっくりと珈琲を飲む。
一息つく瞬間だ。


煙草を一服し、ピアノを弾き始める。
幸せな気分だと、音色が優しくなる。
祐樹を思い出しながら、鍵盤の上で指が躍る。


逢いたい…逢いたい…。
想いが募る。


何曲か弾き終えると、千夏は考えた。
祐樹の事を、絵里香に話していない。
溢れる想いを聞いてほしかった。


驚くだろうなぁ…。
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