眠る心
凪子は、他人行儀に
お辞儀をする。

「素敵なお花
 ありがとうございます」

花を受け取る私の手に触れる
貴方の手は、紫季先生の
手よりも、ずっと冷たい。

「しかたないわよ
 海外ツアーをキャンセル
 なんてしたら、莫大な
 損害賠償費を請求される事に
 なるもの」

「本当にごめん」

頭を下げ、うつむく貴方。

「そうだ
 なっちゃん、しゅうちゃんに
『おめでとう』って言って
 あげてほしいなぁ

 二人の夢の為に
 しゅうちゃんは異国の地で
 頑張って来たんだもの」

「・・・二人の夢?」

「そうよ、元々海外ツアーの
 後押しをしたのは
 なっちゃんだったでしょう?
 
 バンド『ジニア』の熱狂的な
 海外のファンの人達にも
 生の音、しゅうちゃんの歌声
 を聞かせてあげてほしいって
 ・・・・・・」

「わたしが・・・」
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