エングラム



頭の中に嫌な予想がぶわっと沸いて来て、私は言う。

「中学生ですけどシイのこと──」

「それはしっかり伝わってる」

シイが私の頭を撫でた。
嘘。だって。まさか。ねぇ。
断片的な言葉しか。

「そうか、七歳の差かって思った」

今更なのになぁ、と続けてシイ。

疑念が、晴れない。

「だからシランの馬鹿」

シイはそう言うと、ぎゅうっと私を抱きしめた。

「オレさぁ、お前にそこまで疑われるぐらいに愛されたんだな」

愛してるのに信じてくれないの、なんてありふれたくだらないことを彼は言わなかった。

「べ、別に…!」

恥ずかしくてついそう言ってしまった。

「オレは言葉がなくても伝わってくるけど、シランは違うもんな」

そのままシイは続ける。

「けど言葉じゃ伝わりきらないよな──」

シイは私の頭の上に顎を載せる。
甘い花の匂いに包まれる。


流れ込む──甘い低い声。

あぁ、これは。
知らない曲なのに、歌詞が想いが流れ込んできた。

クラプトンのChange The World。

そう、これは確かラブソングだ。
タイトルの通りの歌だ。



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