エングラム
爆発するような音を出すこともなく、それは終わった。
しっとりしているのにざらついたような音。
私はパチパチと拍手を三人に向けた。
「どうだった?シランちゃん」
やや私より背の高いケイに尋ねられた。
「なんていうか、メロディとか流れが物語りみたいな感じ…というか…シンプル的な」
素直に感じた通りに伝えると、うんうん、とケイは頷く。
「歌詞を気にしないでって言ったのは、作曲者の意思だったからなんだあ」
流れが物語りなんて、面白い言い方だねえ。
ケイが笑顔で続ける。
その後ろではシイとユウが会話していた。
レスリースピーカーじゃないとやっぱりあの音は真似できませんね、とユウが言って何やらいかにも専門っぽい会話だった。
「この曲ね、ルカだとか最後の審判だとか、聖書の言葉があるんだ。けっこう謎めいた歌詞なの」
私は頷く。
「だからアメリカでは論争が激しいし、歌詞の解釈なんかいっぱいある。だけどね」
ひとつの言葉に対する感じ方は、人それぞれだということか。
「肝心の作曲者のロビー・ロバートソンはね、曲に歌詞をつけること自体意味がないこと、ってけっこう口汚い感じに言ったんだ」
笑えるよねー、とケイが言って続ける。