エングラム
「曲の歌詞の意味は、作曲者が作るんじゃないのかもね。常に受け取り手にあるのかも」
肩を竦めたケイに、後ろからシイの声がかかった。
「けどオレたちは言葉に意味や想い託してるよな」
「よく言うなぁもう。シイが一番、言葉には裏があるって知ってるでしょ」
ケイが変わらない笑顔のままでバッサリと言った。
そう。変わらない笑顔のままで。冷たく。
「本当シイは優しくて可哀相」
「その言葉前にも言われた」
シイが苦笑を漏らす。
ちょっと待って修羅場っぼい。
ロビー・ロバートソンの言葉から話が発展してる気がする。
内心焦っているが何も言わない。
ここで口を挟むのは野暮、というより馬鹿だ。
「今は止めてくださいねあなたたち」
ユウが手を振って場を制す。
「シランごめん」
あぁ、とユウに頷いてから私に向けて黒髪のシイはそう言った。
「い、いえっ別に…!」
ここで私に謝ることではない。
亜麻色の髪のケイは私を見てにこっとしただけだった。
金髪のユウは目が合って、彼は顔にある笑みを深めた。
一番この人が謎な気がする、内心思った。