エングラム



同級生だけれど、距離感が掴めないから。

私はみんなに卑下されているような劣等感が、拭えない。

けどそれを知られてしまわないように、いつも別の場所を見て涼しい顔。

だって私にはたった一人永遠の味方がいるもの。オウ兄。


一日の時間割を済ませ、その他大勢に混じって帰宅。
二学期にもなったのに、まだ暑い。


セーラー服の胸元をパタパタさせながら、日陰を選んで歩いた。

「おぅいシランさん」

名字ではなく名前で呼ばれたことを少し複雑な感じを抱きながら、低い声がした後ろを振り返──らない。

面倒臭いと聞こえないふりをした。
大体、学校で済ませれば十分な会話や時間を、なんでわざわざプライベートでやるんだ。

学校は学校。どうしてその場限りの関係ではないのだろう。
よくそう、考える。

けど何故か──

「おいってば待てよー」

──私の知らない私がその答えを知っている気がした。

その声と共に、隣にやってきたのは男子学級委員長。

「……なんですか委員長さん」

真っ直ぐ道を見ながら言う。
よく考えれば──名前も知らないのは、顔をよく見ていないからかもしれない。

「いやお前が一人孤独にロンリーに歩いてるから」



< 304 / 363 >

この作品をシェア

pagetop