エングラム



ちらりと彼の顔を伺った。

その歳らしく、ニキビが少しできた顔。
目は一重だが、決してだらけた顔ではない。
黒い髪は短髪で、肌はけっこう焼けている。

「──別に。その一人孤独が楽なんですから」
         ロンリー
そう。楽だ。だが寂しさがあるのも否めない。

「てかお前敬語止めない?」

話聞いてますかと言いたくなったが飲み込む。

「あとお前って意外とサバサバしてるし言うよな。もごもごタイプじゃない」

飲み込んでいたら、彼がそう続けた。

「ほら…一人孤独ロンリーさんってさ、もごもご言う奴いるじゃん?」

お前あんま喋んないからそう思った。

そう続ける彼に、喋るのが怖いだけだと内心で言った。
下手なこと喋って嫌に思われたくない。臆病者代表選手。

「一人孤独ロンリーさんでも、お前“嫌われてる”じゃなくて“嫌われないようにしてる”タイプだ」

なんだろうこの人。
学級委員長という群れのリーダーだ。遠回しに、輪に入れと言っているのか。

その通りだからそう思い、黙って彼の言葉を聞く。



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