エングラム
そう私にかけられた紳士的な口調とは裏腹に──派手な少年がいた。
髪の毛は、金髪。
見える耳にはピアスがごつごつと付けられている。
目は、キツネの目。
「すみません!すみません!」
つい過剰と言われる程に頭を下げてしまう癖。だって。
「いえいえ、本当にあなたは悪くありません」
キツネ目の彼は、そう優しく言う。
「それより急いでいたのではありませんか?」
その質問にハッとして入場門を見ると、選手が大体集まっている。
「本当すみませんでした!」
そう言いもう一度頭を下げた。深く下げた頭を上げて続ける。
「──すみません!失礼します!」
もう一度頭を下げて、慌てて入場門に向かって走り出した。
「──触れることに怯えているのはシイがいないからですかねぇ、シランさん」
人に埋もれていく私の背中を見て、金髪のキツネ目の人がそう呟いたのを。
私は、知らない。