エングラム



奥歯を噛み締めて、せめて後ろと差をつけてやろうと足を動かす。

だが。もう、すぐ隣に。

並ばせまいとするが向こうも必死だ。
クラスで目立たない私のような奴に抜かされまいとする表情。

前に走っていた選手がゴールする。

もうゴールは僅かだと、並び走る。



「負けんなあ!」



──ここで負けたらクラスで何言われるかわかんない!

燃えだしたチキン魂。

隣から私なんかに負けたくないというプライドが伝わってくる。

ないゴールテープ目指し突っ走る。


今まではクラスの額縁の外だったが、今は、中だ!





──…僅かな差で、ギリギリの距離で。

私は3位だった。

クラスのテントに戻る私の足は重い。

だが案外、──…みんなは優しかった。

お疲れ様とかけられた声に少し戸惑ったが返事をした。

「3位仲間!」

委員長が私の肩を叩いた。
バシッと良い音がして、そこを抑えて彼に言う。

「これでも悔しいんだから」

涼しい顔をしているが、本当は2位をとりたかった。…1位?無理無理無理。



< 321 / 363 >

この作品をシェア

pagetop