エングラム
奥歯を噛み締めて、せめて後ろと差をつけてやろうと足を動かす。
だが。もう、すぐ隣に。
並ばせまいとするが向こうも必死だ。
クラスで目立たない私のような奴に抜かされまいとする表情。
前に走っていた選手がゴールする。
もうゴールは僅かだと、並び走る。
「負けんなあ!」
──ここで負けたらクラスで何言われるかわかんない!
燃えだしたチキン魂。
隣から私なんかに負けたくないというプライドが伝わってくる。
ないゴールテープ目指し突っ走る。
今まではクラスの額縁の外だったが、今は、中だ!
──…僅かな差で、ギリギリの距離で。
私は3位だった。
クラスのテントに戻る私の足は重い。
だが案外、──…みんなは優しかった。
お疲れ様とかけられた声に少し戸惑ったが返事をした。
「3位仲間!」
委員長が私の肩を叩いた。
バシッと良い音がして、そこを抑えて彼に言う。
「これでも悔しいんだから」
涼しい顔をしているが、本当は2位をとりたかった。…1位?無理無理無理。