エングラム



教室に戻って、適当に授業を受ける。

冬に入ったこの時期は、勉強に熱を注ぎだす生徒が格段に増える。

行きたい高校もない。
頑張っていることもない。
好きなものも特にない。

死んでるみたいだな、と息を吐いた。

私から見える景色は全て灰色だ。
きらきらしたものは、ない。



適当に授業を受けて、そこそこ溶け込みながら合唱の練習。

昼休みは相変わらず音楽室でピアノ。時々委員長。

たまに違和感。枕が濡れる夜。

稀にベース。なぜか体に馴染んでいる優しくて懐かしい低音。


長い一日を数えるほど繰り返し目をつむると、合唱コンクールの当日になった。


私の合唱のパートはソプラノ。女声で高い方のパートだ。

クラスの合唱曲である蒼鷺の楽譜を頭の中で読みながら、学校へ向かう。

教室の黒板は、チョークでカラフルに寄せ書きがされていた。

それを窓際の席について見ていたら、女子たちに声を掛けられる。

「合唱コン優勝するぞ的なの!シランさんも書いてっ」



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