洒落にならない怖い話
女がすぐそこまで来ている。


1メートルほどのところにきたとき、はじめて変化があった。


大声で笑い始めたのだ。


それは絶叫に近い感じだった。


ギャァァァァアアアアアハハハハァアアアァァァッ!!!!!!!みたいなかんじ。


人の声じゃなかった。


その瞬間、俺ははじかれたように回れ右をして今来た道を走りはじめた。


どういうわけか入り口はあった。


もう少し。


もう少しで出られる。


ふりむくと、女もすごい速さでトンネルの中を這ってくる。


追いつかれる紙一重で、トンネルを出られた。


でも、振り返らずに、ひたすら坂を駆け上がった。


それからの記憶は、ない。


両親の話によると、Aの家の前で気を失っていたらしい。


目覚めたら、めちゃくちゃじいちゃんにおこられた。


あとで、俺はじいちゃんにトンネルの中の出来事を話した。


あれはなんなのか、知りたかった


詳しいことはじいちゃんにもわからないらしい。


だが、昔からあの坂では人がいなくなっていたという。


だから廃れたのだと。


化け物がいる、といったのは、人が消えた際、調べてみると、その人の所持品の唐傘やわらじが落ちていたからだそうだ。


だから、化け物か何かに喰われたんだという噂が広まったらしい。


まぁ実際に化け物はいたのだが。


そういうことが積み重なってその坂は「ヒトナシ坂」と呼ばれるようになった。


ヒトナシ坂のトンネルは、去年、土砂崩れで封鎖されて、通れなくなったらしい。


あの化け物は、まだトンネルの中にいるのだろうか。


それともどこかへ消えたのか。


誰にもわからない。
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