千夜を越えて
「全部、食べたんですか?」
「残すのは性に合わんからな。勘違いするなよ。」
咲夜が戻ると、土方だけが残っていた。
他の隊士の御膳には、残飯があったが、彼の御膳には、米粒ひとつも残っていない。
「ありがとうございます。」
「だから、勘違いするな。」
「明日からは、もっと食べやすいものを作ります。」
笑顔を向けると、彼は余所を向いてしまった。
耳が少し赤い。
照れてるのかな?
なんか、
「かわいい。」
バッと、勢よく振り向いた土方は、凄い形相で睨んでいる。
睨んでいる割に、顔が赤いので、それほど効果はない。
「戻る。」
そう言って、その場を立ち去ってしまった。
その後ろ姿を見て、何だかおかしくなった。
御膳を運ぼうと立ち上がったその時、頭の中を衝撃が走った。
映像がフラッシュバックする。