幼なじみは年の差7歳【完全版】


ゆっくりと話していく私を、良明くんは視線を離さず見つめている。

一通り話した時、良明くんは笑った。


「発想の転換、してみない?」


…発想の、転換?
それって、どういうこと…?

首を傾げる私に良明くんは言葉を続ける。


「過去があるから今の冬馬さんが存在する。
人間関係ってさ、人格を形成するのにかなり重要なわけ。
だから、今の冬馬さんを元カノとかそういう人たちが作ったって言っても過言じゃない。
過去を知るのはツラいことだと思うけど、悲観する点ばかりじゃないよ」


身を乗り出し、私の頭をそっと撫でる。
優しい、温かい手。


「冬馬さんは今、美和ちゃんを選んだんだろ?なら自信持ちなよ。
過去の女に“冬馬兄ちゃんを良い男にしてくれてありがとう”って言えるくらいにならなきゃ。
まぁ、それが簡単に出来れば苦労は無いけどね。
でもそれが理想だと俺は思うよ」


微笑む良明くんは体を戻し、それからテーブルの隅にしまわれていたメニューを取り出す。


「とりあえず何か食べよっか。
俺、腹減って死にそう」

「あ…うん…」


メニューを見る良明くんはまるで子供のように目を輝かせている。
私に「発想の転換」を話した人とはまるで別人。
それを麻実ちゃんも感じていたみたいで、小さく言葉を放った。


「…良明って、なんか凄いね」


普段はおちゃらけた感じなのに、ここぞと言う時には核心を突いてくる…という感じ。
それを一言で言えばやっぱり「凄い」。


「これからは私じゃなくて良明に相談した方がいいかもね。
なんか、その方が良い答えが出るかも」


麻実ちゃんは少し寂しそうな顔で笑う。
それを聞いた良明くんは、麻実ちゃんの頭をコツンと叩いた。


「俺はお前の方がめんどくさい」

「…何よそれ?」


と、ギャーギャー騒ぎ出す二人はやっぱりいつもの二人。
周りの視線が少し気になったけど、それでもどこか、気持ちは落ち着いていた。


(…帰ったら冬馬兄ちゃんと話そう)


目の前の二人が、私にそう決意させてくれた。
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