依存~愛しいキミの手~
「知ればすっきりするかもしれない…。でも怖いんだ…」


圭介との関係が壊れてしまうこと。


圭介が私ではない人を見ていること。


色んなことが怖かった。


「分かった。あすかは圭介が話すまで待つってことだね。私も知らないふりしておくから。って、気になって仕方ないだろうね(笑)」


「うん…。でも圭介は普通にしてくれるから、私も普通にする」


そう、逃げなのかもしれないけど、それが1番いい。


私たちはお腹が減ったので、カラオケを出て朝マックを買いに歩いた。


朝の歌舞伎町は夜とはまた違う顔をしている。


ホストや酔っ払った客が、道路の端で寝ていたり、たくさんのカラスがゴミを漁る。タクシーがたくさん通り、賑わいが終わっていくのを感じる。


私は朝陽が当たる歌舞伎町が1番好きだった。


街がオレンジ色に包まれて、太陽の光でビルの上側が消える。それを見ると音が消え世界中に自分だけしかいないと感じる、そんな瞬間がすごく好きだった。今でもビルに朝陽が当たるのを見るとあの頃を思い出す…。


お客さんに言われたことがある。


一晩で何千万、何億ものお金がこの狭い街の中で回っている。すごいことじゃない?と…。


不況の真っ只中、高級ブランドに身を包み、颯爽と街なかを歩いている人たちを見ると、この街は世界が違うんだと憧れた。学歴社会と言われていても、この街には関係ない。夢も名誉も金も掴めるチャンスが転がっている。俺は地をはってそれを少しずつ拾っただけだ。


そう、1人のホストが昔言っていたのが今でも忘れられない。


マックに着き、朝マックを食べる。朝マックのハッシュポテトが大好きだった。

美香と窓の外を眺めていると、携帯が鳴った。


『圭介』


そう表示された画面を見て、私は一気に緊張した。
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