依存~愛しいキミの手~
箱の中身は予想通りだった…。


1番上に置いてあった写真を手に取ると、今より幼い顔をした圭介と私にどことなく似た人が写っていた…。





写真のくたびれ方で、圭介がどれだけ毎日写真に触れていたのか想像がつく。


箱の中に視線を向ける。


錆びた指輪とネックレス、ブルガリの香水の空瓶、黒いマフラー、何かの包み紙とリボン、中学の校章バッチ、色の剥げたジッポ、止まって動かない腕時計、切符や観光スポットのパンフレット、そして大量の手紙。


手紙は小さくかわいく畳まれている物や、封筒に入っている物様々だった。


昔流行った文字で『圭介へ』と書かれたのと、圭介の字で『春子へ』と書かれたのがあり、圭介の字を見た瞬間、箱に全てを戻し蓋を閉じ慌ててクローゼットを元通りにした。


圭介の思い出だけじゃない…。


多分これは春子さんの思い出箱だったんだ…。


そこに圭介が自分の思い出も詰めた…。


箱に埃もなかったから、開けているんだろう…。


何のために…?


まだ引きずっているの…?


私と前に歩き出したんじゃなかったの…?


私だけが先に進んで、圭介はまだ立ち止まったままだったの…?
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