ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「え、あ、心臓だけど」
そうとしか答えようがない、奇妙な問い。
逆にあたしが訊きたい。
それ以外に、どんな答えがあるのだと?
けれど。
男の顔から――
爽やかな笑みが…消えたんだ。
代わって現れたのは
「!!!!?」
酷薄そうな笑み。
残酷で残虐で残忍で。
とにかく惨いことをしでかす側の顔。
ドSや鬼畜なんていう表現が生温すぎる…そんな顔に、まるでスイッチが入ったように…がらりと切り替わったんだ。
そして思う。
この顔こそ、真なるこの男の顔なのかもしれないと。
胡散臭い爽やかさを振り撒かれるより、こっちのほうが妙にしっくりくるんだ。
「心臓? 違うな」
青い男は…常識を覆すように否定して。
「どこまでも澱んで、
どこまでも罪深い……、
真紅で穢れた血染め石(ブラッドストーン) のようだ」
くつくつ、と笑ったんだ。
それは嘲るように、怒りを含んでいるように。
多くの負の情を乗せて…剣呑な声音と化す。
極度に温度を下げて…
あたしの胸の奥に切り込もうとする。
深い深い藍色の瞳が、黒く澱んでくるのを見れば…胸の奥が妙にじりじりと焦げ付いたようなおかしな熱を感じて。
それは恋という類ではない。
そんな甘い物ではなく…
いうなれば、本能的危機感。
何?
一体、何が言いたいの?