ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「……?」
突き刺すような視線を感じて、あたしは訝った。
冷めた青からではない。
もっと激しい温度を感じさせる…オレンジから。
苛立ったように攻撃的な…
褐色の瞳が向けられていたんだ。
悲痛さ滲み出る表情で、
食い入るように見ているのは――
あたし?
それとも櫂?
何か言いたげで、だけど唇を噛んで。
また口を開こうとするが、再び唇を噛む。
詰るような、訴えるような…そんな褐色の瞳を大きく揺らし、そして苦しげに目を瞑ると、すっと視線を外してしまった。
煌は、感情はいつもストレートで、考えるよりすぐ行動の男だ。
それが己の行動を制してまで、何を考えているというのだろう。
一体、どうしたのだろう。
そんな…苦しげな顔で。
らしくないじゃないか。
8年物幼馴染みに、何を言い淀んでいるんだ?
心配になって声をかけようとした瞬間、
「久しぶりだね、暁の狂犬!」
にこにこ、にこにこ。
怪しげな爽やか男は、警戒なく…そんな煌に手を振った。
瞬間。
櫂と煌の温度が下がった。
煌の舌打ちが聞こえる。
「……やっぱりお前か。宮原から電話貰ったって言う玲から連絡受けて、慌てて現場に行けば、」
煌は忌々しげに、何かを指で弾く。
それは放物線を描いて床に転がった。