ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「紫堂櫂、さんですよね?」
途端に櫂は、端正な顔を嫌悪に歪めた。
見知らぬ人間から、フルネームで呼ばれたことが嫌なんだろう。
「そうですよね、やっぱり! 携番教えてくださいっ! やっぱりあんなゲームより実物の方が何倍もいいなあ。お願いします!」
櫂を相手に…意外と剛胆なうさぎさん。
"あんなゲームより"
彼女もあのゲーム中毒者(ジャンキー)か。
「……ゲーム?」
櫂も聞き逃さない。
櫂は、自分の知らぬ処で氾濫する情報を嫌悪する。
「はい。ブラッディ・ローズです」
「血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)!!?」
途端に、櫂と煌がびくっと反応する。
考えてみれば…
ゲームの名前と同じ響きだ。
「か、櫂。ゲームの名前よ。今流行している乙女の恋愛ゲーム。有志よ、同人ゲームよ、アリス委員会」
なんであたし…必死に、擁護するように補足してるんだろう。
「そうです、そのオトゲー。乙女がイケメンにドキドキキュンキュンする擬似恋愛。リアルさが売りのブラッディー・ローズで、勿論、櫂様が攻略キャラです! やっぱ櫂様ってツンデレ系列強引肉食系? 期待通り、あは☆」
"ツンデレ系列強引肉食系"
何処に住んでいるどちらさん?
うさぎさんは不可解だ。
きっと月の住人なんだ。
「芹霞」
櫂が忌々しげにあたしを睨み付けて。
「お前…"その存在"を、知ってて黙ってたのか?」
その存在とは…ゲームのことだろう。
背筋が凍る、櫂の怒りの笑み。
従兄の玲くんとは違う、怖い"にっこり"。
「あは☆」
移ってしまった☆をつけて、
あたしはだくだくと汗をかいた。