ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
本人は無自覚なんだろう。
だから色気見せても、こんなに堂々としているんだろう。
――芹霞ちゃあああん。
あの子がよくぞ此処まで成長した!!
育ての母のような…
感無量の気持ちが昂ぶってくる。
「返事!」
また、頬をむにゅうと摘まれた。
痛い!!!
――こんな警戒心のない眠り見せるのは、これからも俺の前だけにしろよ。
「にゃんか、くじょきもんきゅみたいらじょ?」
"何か、口説き文句みたいだよ?"
「――――……。
……………へえ。
そういうのは判るんだ。
一体誰から教わったんだ?」
笑みを浮かべる、櫂の目が笑っていない。
むしろ…怒っているような…?
あたし、何を怒られているんだ!!?
焦ったあたしの頬から、櫂は手を引いた。
またもや、ほっぺがじんじんする。
その時、櫂が言ったんだ。
「いい加減、口説くような…
そんな状況にさせてみろよ、芹霞」
涙目で見遣った相手の声は、
微かに掠れていた。
熱に浮かされているかのように。
ゆっくりと細められる切れ長の目。
いつも真っ直ぐに貫く漆黒の瞳には、まるで哀願しているかのような……弱々しい光を宿していたんだ。
切なそうで。
苦しそうで。
その様子に…胸が締め付けられる。