ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「なあ…本気で口説かせろよ」



悲痛なまでに切なげな…端正な顔。


漆黒の髪がさらりと、頼りなげに櫂の頬に落ちた。



その目は…あたしを見つめたまま。



だからあたしは――



「……彼氏いない歴17年のあたしを馬鹿にしてるの?」


あたしの恋愛経験値のなさを馬鹿にされて、詰られたのだと思って、むっとしてしまったんだ。


「俺だって居ない」


あたし以上にむっとした顔をする櫂。


恋人いない自慢をしたってね、櫂とは次元が違うんだ。

作れないのと、あえて作らないのとでは意味が違う。


結果論ではない。


そう言うと、櫂は睨み付けるようにあたしに言う。



「俺が……作らない理由、

判っているのか?」



まるであたしのせいだとでもいうかのように。


違うよね?


「近寄る女がうざいんでしょう?

そう言ってるじゃない、いつも」


そう返すと、櫂の眉間にくっきりと刻まれる深い皺。


「え? 違うの?」

「考えれば判るだろう!!?」


かなりご立腹のご様子だ。


だからあたしは考え込んだ。

よくよく考えた。


櫂に殺されたくない。

だから考えているんだけれど…


「何だろう……」


「俺には、お前が居るからだろうが!!!」


かなりイライラした様子の櫂に、怒鳴られてしまった。
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