ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「………」

「……何?」


「………」

「……だから何?」


「………」

「何拗ねてるのよ」


「……拗ね……違う!!

俺じゃない俺に、香水強請(ねだ)られたって、あれは一体なんだ」

 
「ああ、だから弥生よ。彼女の攻略相手があんただったの。で、ゲームの進行上、池袋のその香水店で指定の香水をで買う必要があったの」



「………」

「な、何よ」


「………」

「嘘じゃないってば。弥生と直接話す?」


「……お前は?」

「は?」



「お前の相手」



そんな威圧的な目で聞く事柄だろうか。


たかが恋愛ゲームの攻略対象に。



「いないわよ。まだ選んでないもの」


「……………。

じゃあ、誰にするつもりだ」



拗(しつこ)い上、不機嫌極まりない。


本当に何をそんなに拘っているのだろう。


 
「別にどうでもいいじゃない、ゲームのことなんか。


だけど敢えて言うなら……

……櫂以外だろうね」



ぎしり、と椅子が軋んだ音がする。


櫂が身体ごとこちらを向いていた。





「何故だ!?」



そんなに驚くことがあるだろうか。


声が掠れている。


「幼馴染から愛の言葉貰ったって、嬉しくないわ。

あたしだって相手選ぶわよ」


その時の――

見開いた切れ長の目を何と表現すればいいのだろう。


どこまでも深く傷ついたような、見ている方が切なくなるような目だった。


どうして、そんな目をするのだろう。


たかがゲーム如き、

たかがゲームの虚構の台詞如き、


あたしが揺らぐとでも思っているのだろうか。



そんなの――

馬鹿馬鹿しい。


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