ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

鍵が掛けられていたはずのドアは、蝶番(ちょうつがい)ごと乱暴に壊され、床に横たわっている。



目の覚めるような、橙色の髪。

耳元には同色の石のピアス。



かなりの長身の少年――如月煌(きさらぎこう)は、あたしの上腕を掴んで先輩から引き剥がし、その片手にあたしを易々と抱いた。


派手な色合いに隠された、野性味溢れた精悍な顔立ち。

褐色の瞳が、まっすぐ会長に向けられる。


「会長さんは、随分とガラの悪い奴らと仲がよろしいようで。

……なあ、櫂がいねえからってそれはないんじゃね? いくらいつも櫂に敵わないからって、櫂がいなけりゃ我が天下だと」


その目を瞬間的に鋭くさせ、挑発的な光を点す。



「この俺をみくびってたか、ああ!!?」

  

凄んだ顔と恐ろしく低い声。


空間がびりびり震える。


生半可な身構えでは、すぐに細かく切り刻まれてしまう――怒気を孕(はら)んだ危険な空気。



「こ、この……紫堂の犬が!」



虚勢を張った先輩は、一歩退いた。



「だから? 

……なら、犬は犬らしく、

その喉笛思い切り噛み付いてやるよ!」



闇色は完全に、橙色の剣呑さに飲み込まれている。

その威圧感に辟易している。


まるで鋭利な刃を首元に突き立てられているような、そんな錯覚を起こすほど、煌の空気は攻撃的で。


それでも煌の本気とは程遠いものだけれど。



「……煌」



あたしは煌の裾を引き、頭を横に振った。


何か言いた気な褐色の瞳が向けられたが、あたしは無言で目で制すと、煌は諦めたように頭をがしがしと掻き、判ったと右手をあげた。


「先輩、今日も1日お疲れ様でした。ごきげんよう」



一礼すると煌の服を掴み、屈辱に震える先輩を視界の隅に捕え、そして強制的に背にした。


気分不愉快この上ないったらありゃしない。


ふん。


やけ食い決定!!
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