ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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「お前、やけ食いって…それでクレープ4つ目は食い過ぎだって」

ぱくぱく…。


「ほ~ひふこうらっれ、3つめらない」


ぱくぱく…。


「おい、勘違いすんなよ? いつも言ってるが、俺は女みてえに甘い物好きじゃねえんだ!!お前の付き合いだ、付き合い!!!」

「ほう?」


今手にしているクレープ3つめで、チョコバナナカスタードにたっぷり生クリームを乗せるよう注文して、更にそこにオレンジアイスを2個入れたの、あたしは見逃していない。

それに、よく行くスイーツバイキングで、あたしと競い合うようにして全品制覇する男が今更何を。


如月煌は、同じ家で寝食を共にしてきた、兄弟同然の8年来の幼馴染だ。

血の繋がりは全くない。


今は不可解に家出中。


煌という男の存在感はかなりのもので、とにかく目立つんだ。


190cmを超える、かなり鍛えられた肉体。

その顔は野生的で精悍で、外見からは女々しい要素などは一切何もなく。


あたしと同じ17歳なのに、見るからに堅気ではない、修羅場を潜り抜けてきた者特有の危険な空気を纏う。


そんな危険な香りを漂わせる煌は…かなりの美形。

自称桐夏№2を誇示する…自己陶酔生徒会長より、よっぽど漢(オトコ)前だ。


噂によれば、ワイルド好きなお姉様達による、隠れファンクラブがあるらしい…のに、それが表に出てこないのは、煌が嫌がるからだ。


というか、煌が…美形だということを自分で認めないから、からかわれたと思って怒り出すんだ。


美意識がずれた原因は、恐らくその髪が天然橙色であるが為だと思う。


これは"奴"の地毛で、あたしの密やかなお気に入りであるというのに、それが何故か煌の劣等感らしく、そればかり目にいくためか、自分の顔の作りが霞んで見えているらしい。


かなり短気な…単純過ぎる直情的な性格の癖に、おかしな処は複雑過ぎて。


とにかくも基本、理性より本能に重んじて身体を動す男だ。
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