ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


玲くんは、隠れお洒落さんだ。


櫂のようにモノトーンですっきりしたようなシンプルの服でもなく、煌のような…とにかくデザインより機能性重視の服でもなく。

白など淡い色彩を基調にした…上品なデザインのものを好む。

玲くんの纏う柔らかな空気にあうものでありながら、玲くんのオーラに飲み込まれずに、密やかに独自で自己主張出来るもの。


赤札になってまとめ買い出来るような、ありきたりの服ではない。

無論、在庫整理で福袋に入るようなものでもない。


庶民派のはずなのに、そこいらの妥協はない。

玲くんのささやかな自己主張なんだろう。


そんな服で大根を買いに行っているんだ。


「玲くん、お洋服は何処で買うの?」

「ん? ネット。櫂のもネットで僕が買ってるんだ。ネットだと、人件費がかからない分、店頭にはない割引やポイントついたりするからね」


成る程、その手があったか。

さすがは玲くん。


「桜は殆どが手作りだから、ネットで材料を仕入れることもあるね」


桜ちゃんも玲くんに負けずに器用だ。

いつも玲くんのお手伝いしているからかな。


あたし、玲くんのお手伝いしても、お料理の腕もあがらないのは何故だろう?


「さ、行こうか」


玲くんは本当に嬉々としている。

まるで大根の特売日のようだ。


珍しい表情に戸惑いさえ覚えたあたし。


あまり感情を表に出さない玲くんが明らかに"喜"を見せるくらいなのだから、おでかけしたかったのも知れない。


それとも、弥生に会いたいのだろうか。


もしかして両想いとか?


え?

え?


きっとあたしの目はキラキラ輝いているだろう。


「ねえねえ、玲くん」


「ん?」


「弥生のこと、実は好き?」


すると一瞬、鳶色の瞳に冷たいものが流れた。
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