ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
まさかそんな反応がくるとは思っていないあたしは、思わずたじろいでしまったのだけれど、玲くんはすぐにいつもの優しい顔に戻り、
「うん、芹霞の次にね」
と言った。
別に驚くことでもない。
お互いの好意は伝えている。
――玲くん大好き!!
――ふふふ、僕も芹霞が大好きだよ?
遥か昔に何度も交わしたような会話だけれど、これは櫂の従兄であり優しい玲くんだからこそ許される。
最初は…櫂に聞かせる為にわざと言って、両手広げる玲くんの元に飛び込んでいた。
羨ましかったら、昔みたいにあたしの元に飛び込んでおいでと。
だけど櫂は、忌々しげな目を寄越したまま…今に至る。
そしてそのうち…あたしと玲くんとの間には、これが挨拶のようになってしまった。
玲くんの包み込むような温もりは気持がいいんだ。
あたしは昔から"ぎゅう"に抵抗ないし、むしろ"ぎゅう"は好きだし、玲くんはいつもにこにこにっこり、年上の余裕みたいなものがあるから、何か安心出来るんだ。
「君は僕の愛しのお姫様だからね。君以上の存在は居ないよ? その君が大好きな友達なら、僕も大好きだよ。
そういう"好き"かって訊いたんだよね? 勿論」
玲くんは、何とも麗しい王子様スマイルで仰った。
でもあたしは判っている。
「……玲くん」
「ん?」
「怒っちゃった?」
「何で?」
にっこり。
「どうしてだろう、照れてもいいはずなのに、逆に責められている気がして、恐怖さえ感じるんだけど」
というか、何で怒っているのか判らない。
やがて玲くんはぷっと吹き出すと、あたしの肩を優しくぼんぼん叩く。
「芹霞は鈍いんだか鋭いんだか判らないね。ははは、独り言。さ、早く行こう、初めての2人のおでかけ」
玲くんは微笑むと、あたしの背を押した。
その言葉尻こそ、玲くんのご機嫌の原因だと気づかぬあたしは、聞き流してしまったけれど。
そしてあたし達は弥生の家に向かったんだ。