ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



晴天で、汗ばむ気候だった。

休みに入った途端、この天気。

蝉の声に、気力が萎えてくる。


そんなBGMなくても、夏だということはよく判るから、黙って見守っていて欲しい。


灼熱の太陽に、くらくらする。

数日前までは、冷夏だと大騒ぎしていたというのに、この温度差で体調をおかしくしそうだ。


「ところでさ、芹霞。昨日の偽櫂のメールってまだ来てるの?」


唐突に玲くんが言った。


「ああ、朝起きて携帯チェックしたら、山に来てたよ。本当にうんざりする程。玲くん見てみる?」


あたしは歩きながら携帯を取り出し、玲くんにそのメールを開いて見せた。

思いっきりクサい台詞を堂々と吐きまくる、偽櫂のメール。


恥ずかしくないんだろうか。


やはり歩きながら画面を覗き込んだ玲くんは、やがてお腹を抱えて笑い出した。


「ご、ごめ……はははは、か、櫂より上手……くくくく、こりゃあ櫂は……あはははは」


目尻に涙を浮かべながら笑っている。

最早何を言いたいのかも判らない。


「だけど、何だろう。"今日の3時を忘れるな"って。芹霞、何かあるの?」

「知らない。だってこのゲーム、あたしやったことないもの」

「え、でもこんな親密なメールくるくらいなんだから、ある程度進んでいるんじゃ?」


あたしは首を横に振って、このゲームがあたしの携帯に現れるまでの経緯を話した。



「……血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)から託された?」



「うん。だけど中身は、弥生から薦められていたゲームと同じだったのよ。だからあたしは最初から始めずして、もう弥生と同じ13章から開始出来るらしいわ。何だか格闘ゲームになるらしいよ?」


玲くんは険しい顔をして腕を組み、何やら考え込み、

 

「……厭に、あっさりしすぎているなあ」


そう呟いたんだ。
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