ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「この話、櫂にした?」
「いいえ? 櫂には、ゲーム内容やシステムの概略しか話してない。だって意味ありげに渡されたものが、実は恋愛ゲームだったなんて、お粗末過ぎるじゃない。言わなくてもいいかなって、省略しちゃったけど?」
「……安易過ぎるのが、妙にひっかかるな」
玲くんは一体何について疑念を抱いているのだろうか。
あたしにはさっぱり判らない。
「……その、"アリス"って言うパスワードだけど、弥生ちゃんは何て?」
「初めて見たって。データにERRORでも起こしているのかもねって。あとでこのゲームに精通しているという由香りんに聞いてみるとか言ってたけど」
「……由香りん?」
「同い年の遠坂由香ちゃん。ゲーマーのオタク少女で変わっているの。女の子なのにボクって言うし、口癖は『神が降りた』。アーケードでは無敵の女の子らしいよ」
「アーケード…神……ああ、もしかして"あの子"かな」
突然玲くんは意味ありげに笑った。
「玲くん、知ってるの?」
「いや、ちょっとネットの世界で噂はね。話戻すけど、そのパスワード云々は芹霞だけの、特殊な可能性が強いんだね」
「あ、うんまあ。だけど読み込み直後にERRORが起きただの、再設定しろだのあったから、SDカードがおかしかったのかもよ」
「…… 芹霞」
「ん?」
「マイクロSDカードには、アドレスのメモしか入っていなかったんだよね?
このゲームはDLされた形なんだ。ゲームとして機能出来るということは、既にメインのデータは、マイクロSDカードから離れているんだよ」
「へ?」
「SDカードが傷ついていようが傷ついていまいが、関係ないってこと。
パスワード云々、再設定云々は、故意的の可能性がある。試しに今SDカード抜いてみるけど……ほら、ゲーム起動するでしょ。
しかも何だ、このタイトル。
"ブラッティ・ローズ"?
偶然かそれとも…
――誘いか」