ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
――櫂様は倒れられて。
「はあッ、はあッ。芹霞、何だって?」
――櫂様は倒れられて。
玲くんが額に汗を滲ませながら、訊いてくる。
「玲くん、櫂が…
倒れちゃった!」
半分涙目であたしは声を上げた。
玲くんは瞬間的に顔を険しくさせた。
「芹霞、電話貸して」
玲くんは深呼吸をして、無理矢理息を整えた。
顔は真っ青のまま、あたしから携帯を受け取り、耳にあてた玲くん。
あたしは玲くんにぴたりとひっついて、その会話を聞いた。
「桜? 僕だ。で、櫂はどうしたんだ?」
『はい。本家からの帰り、自宅近くで急に頭痛がするとおっしゃられて。マンションについた時には意識朦朧となって倒れられました。煌がベッドに担ぎ込んで、今は部屋で眠られてます』
「頭が痛い? 体調崩した?」
『若干脈拍は早い気はしますが、熱があるわけでもありません。多分……体調不良によるものではないかと。
これは――…』
電話の向こうが一瞬黙り込む。
『呪詛(じゅそ)、かと』
ジュソ!!!
……って何だろう?
『マンションについた時、確かに負の力…瘴気(しょうき)が膨張しているのを感じました』
ショウキ!!!
……それも判らない。
だけど、常識離れした…おどろおどろしいものに感じるんだ。
それが良くないものだということは、玲くんの険しい表情が語っている。