ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「でも、家には僕の結界が張ってあるだろう。それでも櫂は目覚めないのか?」
家に結界!!!
あたしがいつもお世話になっている櫂達の家に、にっこりほっこりの玲くんがいつの間にやら結界!!!
何とも――
現実離れした会話が続く。
だけど現実、ゾンビが襲って来て、玲くんには…普通じゃない"力"がある。
そういう事象が当然に罷(まか)り通る…そんな異質な現実に放り込まれたのなら、今更何が見えてこようと…不思議ではない気すらしてくる。
何かもう――
何でも来いだ。
『はい。顔つきは外よりも若干穏やかですが、意識はありません』
「桜が呪詛だというのなら、多分そうなのだろうな。
……判った。家の結界をレベル5に引き上げる。
僕が帰ってからでは時間がない。……はあッはあッ。……いいか、桜。僕の部屋に行き、サブディスプレイで例のあのパスワードで、画面通りのものをメインコンピュータに打込んで欲しい」
『はい』
バリバリッ。
忘れていた。
あたし達、ここで悠長に電話している暇がない。
しかも――
「玲くん、何だか光、弱まってきたような?」
玲くんは驚いた顔をして、電話を耳にあてながら周囲を見渡す。
「何だかあいつら、更に数を増やしているような?」
ちっという舌打ちの声が聞こえる。
そして右手を挙げようとした時、玲くんは突如苦しげな表情をして蹲(うずくま)ったんだ。