ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


俺は踵を返し、玄関に向かう。



「ちょっと待て、櫂!!」



無機質で冷ややかな白い廊下。

慌てた玲が背後から飛びかかるように、俺を羽交い締めにした。



「まず落ち着けッ!!!」

「俺は行くッ!!!」


俺は玲の腕を振り解こうともがく。


「何処に行くって言うんだ!? ただ闇雲に探し回って、また呪詛にかけられたらどうするッ!? 根本的な問題は解決してないんだ、家から出てまた倒れたらどうする!? お前は紫堂の次期当主なんだぞ!? それにお前は、道化師にアバラ外されてる、忘れてないよな!?」



「あれは油断してただけだ!!」



「状況考えろッ!!!探すなら、桜や煌に任せろッッ!!」



「駄目だ、俺が行く!!

芹霞が待っているんだッッ!!!」




「櫂ッ!!!」





芹霞は――…

助けを待っている。



馬鹿芹霞。




俺との関係を――…


"勝手にごめんね"



そんな一言で終わらせるな。




お前、泣いていただろう。

お前の名前が滲んでいた。



煌の名前を書いて――…

消しゴムで消しただろう。



俺は――判っている。




お前また――


俺の大切なものを守る為に

自分を犠牲にしただろう?



だから――


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