ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「玲。俺の性分は判ってるよな」
俺は込み上げる衝動を、ぎりぎりの理性で抑えつけながら、出来るだけ静かに言った。
「俺がどれ程芹霞を想ってるか……お前判ってるよな」
「………」
「俺は生憎、お前みたいな出来た大人じゃない。寝ている隙に惚れた女奪われたのに、おとなしく諦めて……平気でなど居られない」
「………」
「お前みたいに冷静には居られない」
「……勝手だよね」
刺を感じさせる、抑揚ない声音。
俺は思わず顔を後方に捻じ向けた。
鋭く見据える、鳶色の瞳。
心突き刺してくる光は
"敵意"というものにもよく似て。
「僕って一体どんな奴?」
一瞬――
鳶色の瞳に見えたのは、
「お前は僕を全然判っちゃいない。僕がどんな気持ちか、どんな想い抱えて、必死に今お前を止めているのかなんて」
ああ――
「本気で……本気で守りたいと思う愛しい女を、自分の弱さで犠牲にさせて、それで僕が本当に平気だと、冷静でいられると――それ、本気で言ってる?」
こいつもなのか。
「出来た大人って何?
理解したフリをして、作り笑いをして見守っていればいいの?
どろどろとした汚い感情を、永遠に見て見ぬフリし続けていればいいの?
……勝手に"聖人"像を押しつけるなッ!!」
一瞬――
鳶色の瞳に見えたのは、
"男"としての情。