ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
玲の気性は判っていたはずだ。
抱える闇を判っていたはずだ。
いつから俺は、
本当の玲から目をそらしていた?
玲ははっとしたように目を見開き、そして苦しそうな端麗な顔を俺から背けて、
「何だか、精神が不安定だ。発作後はよくある。気にしないでくれ。
……頼む、忘れて欲しい」
乱れた深呼吸を繰り返していた。
苦しそうに。
「俺が行く」
後方から煌の声がした。
堅い決意秘めた眼差し。
褐色の瞳に走る色は。
覚悟を決めたその色は。
俺が持つものとよく似ていて。
幼馴染以上の繋がりより、
護れる強さを求める。
一方的でも構わない。
自分が満たされるよりも
満たしてやりたいと望む。
それは今の俺と同じもので。
ああ――
煌、お前までもか。
理解出来ない程、俺は鈍くない。
薄々――感じていた。
そうならない方がおかしいだろ?
俺が判らない方がおかしいだろ?
ああ本当に玲も煌も。
俺は今……
どんな表情をしているのだろう。
苦渋――だろうか。