ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「芹霞さんは、私が迎えに行きます。
その馬鹿蜜柑では、道化師の相手ができないでしょうから」
続けて桜も、黒いクマの人形を抱えて廊下に現れた。
誰もが――
自分を責めている。
「多分俺には、道化師の居場所が判る」
煌が険しい顔をして言い切った。
「あいつは――
――…制裁者(アリス)だ」
「何だって!?」
驚いた玲が、俺を制する力を弱めた。
「制裁者(アリス)!!!?
8年前のあの時、紅皇が潰したじゃないか!!
大体、"だから"煌が此処に居るんだろう!?」
煌は本当に辛そうな顔をした。
「あいつは――
オリジナルって言った。
だとしたら――
俺が育ったあの場所に居る
……多分」
「…… 仮に。その場所に道化師と芹霞さんが居たとして。それでどうやって煌は芹霞さんを奪って帰れますの? 勝算は?」
闇のような漆黒の瞳が、褐色の瞳に絡みつく。
「ない……こともねえ」
煌は困ったような顔をして、頭をがしがしと掻いた。
「こればっかしは、俺の一存じゃ決められねえ。それじゃなくても、避けてしまってたからな。骨の数本覚悟して、直談判に行こうと思う」
「煌。お前は残れ」
俺は言った。
駄目だ。
過去の悪夢に引きずり込んでは。
これ以上、紫堂の犠牲にしては。
「この件からは――
道化師からは手をひけ」
こんな権威は使いたくなかったけれど。
主たる俺からの絶対命令。
頼むから、聞け。