ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
片手に握る、銘酒『鬼ごろし』の一升瓶。
緋色の唇を宛がり瓶の中の液体を呑みこむと、ぷはーっと、どこかの親父のような豪快な息を吐いた。
いつも通りだが――
鬼ごろし程度では、この人は殺されない。
こんなに存在感があるのに、誰一人としてその気配を悟れないのは神技だと思う。
今まで何処に潜んでいたのだろう。
いつから居たのだろう。
「ご無沙汰しております、緋狭さん。
いえ――紅皇」
俺は丁重に挨拶をした。
紅皇と異名をとる緋狭さんは満足げな笑いを浮かべた。