ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「本当に1度もッ!? 本当の本当に眠くなったりもしないのッ!?!」

「しねえな」


ああ。

だからきっと。


こいつの笑い方はおかしな『ぎゃはぎゃは』なんだ。

やっぱりちょっと頭がおかしいのは、人間の三大本能を失ったせいだ。


「……その哀れんだ目、やめろ」


唸るような低い声で、金色男が凄んで来る。


何だか…オレンジワンコに似ている気がした。

纏う空気か、会話のノリか。


イヌ科の野生動物…みたいだ。

意外と馴染める理由は…そこにあるのかも知れない。


「……って、もう知らんわ、あの薄情ワンコ」


その呟きは、金髪男の耳に届いていたらしい。

しかも誰と重ねていたのかも判ったらしい。


「……お前が暁の狂犬を怒る原因は、電話の助けを拒まれたからか?」


金髪男が金色の瞳を細めた。

 
「そうよ。しかも一方的に切られた。玲くんが大変だと言ってるのに見捨てたんだよ!!?」


「でも、あいつ来たろうが」


何処までこいつは見ていたのだろう。


「迷いがあった事実が許せない。あたしはそんな非情に煌を育てた覚えない。しかもあたしを拒んでるし。だから幼馴染みは解消したの」


憤然と答えるあたしに、ぎゃははははという笑いが返ってくる。


「当然だろう、あいつはお前の子供でもなけりゃあ、飼い犬でもない。あいつはお前ではなく紫堂櫂の忠犬なんだから。

お前、紫堂櫂とお前が危機に陥ったら、どちらを先に助けろって言う?」


「櫂に決まってるわ」


「じゃあ紫堂櫂と、紫堂玲だったら?」


案外、意地悪だこの男。



「両方救えって言う」


あたしは横を向きながら言った。

< 251 / 974 >

この作品をシェア

pagetop