ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「本当に1度もッ!? 本当の本当に眠くなったりもしないのッ!?!」
「しねえな」
ああ。
だからきっと。
こいつの笑い方はおかしな『ぎゃはぎゃは』なんだ。
やっぱりちょっと頭がおかしいのは、人間の三大本能を失ったせいだ。
「……その哀れんだ目、やめろ」
唸るような低い声で、金色男が凄んで来る。
何だか…オレンジワンコに似ている気がした。
纏う空気か、会話のノリか。
イヌ科の野生動物…みたいだ。
意外と馴染める理由は…そこにあるのかも知れない。
「……って、もう知らんわ、あの薄情ワンコ」
その呟きは、金髪男の耳に届いていたらしい。
しかも誰と重ねていたのかも判ったらしい。
「……お前が暁の狂犬を怒る原因は、電話の助けを拒まれたからか?」
金髪男が金色の瞳を細めた。
「そうよ。しかも一方的に切られた。玲くんが大変だと言ってるのに見捨てたんだよ!!?」
「でも、あいつ来たろうが」
何処までこいつは見ていたのだろう。
「迷いがあった事実が許せない。あたしはそんな非情に煌を育てた覚えない。しかもあたしを拒んでるし。だから幼馴染みは解消したの」
憤然と答えるあたしに、ぎゃははははという笑いが返ってくる。
「当然だろう、あいつはお前の子供でもなけりゃあ、飼い犬でもない。あいつはお前ではなく紫堂櫂の忠犬なんだから。
お前、紫堂櫂とお前が危機に陥ったら、どちらを先に助けろって言う?」
「櫂に決まってるわ」
「じゃあ紫堂櫂と、紫堂玲だったら?」
案外、意地悪だこの男。
「両方救えって言う」
あたしは横を向きながら言った。