ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「当然だ。お前如き野犬が、あの櫂に太刀打ちできるわけなかろう。あれは私が手を加えた"芸術品"。因(ちな)みに玲を指南したのも私だ。
武力だけでも、あいつらに勝てるものなら勝ってみろ。
まず、今のお前では到底無理だがな」
はっきり言うなよ。
胸が凄く痛くなっちまったじゃねえか。
「お前も玲みたいに、"抑え込む"のか」
僅かに、ほんの少しだけだけれど、緋狭姉の顔が翳った。
「玲は…吃驚した。正直」
確かに、芹霞には猫可愛がりしてるし、櫂を意地悪く弄りはするけれど、それは、フェミニストたる玲の性格だと思っていたし。
だけど。
「だけどな、本音漏らした玲を見ていたら…俺、何か隠すことが馬鹿馬鹿しくなったんだ。
俺、確かにヘタレだからよ、今後の俺らの関係考えると正直怖え。だけどよ、それ以上に、芹霞に縁切られたのが堪えてる。
芹霞が居なくなったことが堪えてる。
この辛さに比べればよ、隠そうと悩んでいたのが本当にちっぽけすぎて、そのせいで芹霞失ったと思えば、俺が情けなくて。
ぐだぐだ悩んで周り巻き込んで共倒れするくらいなら、辛くても前に進んで最善尽くすよ、俺。
……多分、玲も似たような気分だったんじゃねえか?
俺、絶対、芹霞から信頼勝ち取る。
許されなくても、何度でもな」
そう宣言すると、緋狭姉は満足そうに笑ったんだ。
「いい傾向だ。……お前も、玲も。
坊は聡いが、芹霞のことになると暴走する。
今回、お前らの方が好感度プラス0.1ポイントだ。ちなみに MAXは10000だ。お前はまだ1にも満たぬ」
「ひっでえ~ッ!!」
緋狭姉は艶やかに笑った。
それは本当にもう穏やかに。
だから――
訊いてみたくなった。
「なあ……
"オリジナル"ってどういう意味だ?」
「辞書を引け、馬鹿犬が」
「いやそういうことではなく……
制裁者(アリス)の、
"俺の"オリジナルっていうことさ」
途端に、緋狭姉の目から穏やかさが引いた。
代わって走ったのは警戒。
緋狭姉には、似つかわしくねえ色だ。